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◆第2次安部内閣の初期の重点政策としてアベノミクスが進められている。その三本の矢の経済政策(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)については、政治家・行政関係者、実務家、研究者・専門家、あるいは海外等のそれぞれから賛否両論が出ている。景気回復をもたらすのか、それとも失敗して経済・財政破綻を招くのか。市民一般にとって最も大事なことである雇用拡大・所得増大が達成されるのか、それともかえって悪化を招くのか。禁じ手だ、いや、起死回生策だ。実体経済の政策面では新鮮味がない、いや、斬新だ。等々、相反する意見が闘わされている。ただ、「将来は未知数」、「(程度の大小は別にしても)リスクは伴うものである」ということだけは、多くの者が否定できないでいると言えよう。
◆そうした中で、最も大事で欠かせないこととしては、「やってみなければわからないこと」をやった場合に、少なくとも「運を天に任せっぱなしにすること」だけは、避けなければいけない。極端な政策の実施は、良かれ悪しかれ副作用を伴いがちなものである。もしも大きな副作用がある場合に、あるいは、万が一失敗した場合のために、「セーフティネット」を最大限に張っておくことを、政策を担う者は忘れてはならないと思います。成功した場合でも、それはリスクへの保険と考えればいい。
◆例えば、国債の暴落やハイパーインフレ、金融・財政破綻、格差拡大・失業増大などを招く可能性があるのかないのか、それは将来のことだから誰にもわからない。どちらにしても、可能性の有無を議論するだけでは不十分であり、リスクを伴う分だけ、もしもそうしたことを招いてしまった場合にどのように対処するのかについて、あらかじめできる限りきちんと考えて、予防的対策も取っておくことが必要不可欠なのではないか。運を天に任せて、後の祭りで済ませられるほど、現在の経済・財政は簡単な状況にはなく、極めて深刻な状況にあるという「現実」だけは、私たちは忘れてはならないと思います。
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