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(社)奈良まちづくりセンターは、1991年に始まるマレーシア・ペナンの町並み保存の支援を皮切りに、これまで約20年間にわたってアジアとの国際交流、連携・相互支援を進めている。そのアジアネットワークの20年余りの活動総括と、グローバル化に対応した未来への提言をテーマに、2013年1月12日〜14日、マレーシアのペナン(世界遺産都市)でまちづくり国際シンポジウム「Urban Conservation Network in Asia and Its Future −Heritage,
Cultural Identities and Asian Dynamism−」を開催した。
シンポジウムは、奈良まちづくりセンターとペナン・ヘリテージ・トラストが協働して開催したものである。アジア9ヶ国・地域、20団体が一同に会して、アジア各地の町並み保存の現状報告を行い、歴史的町並みとそこで営まれるコミュニティをいかに守るか、アジアの町並み保存の未来像はいかにあるべきかについて、熱いディスカッションを行った。
(開催に当たっては、トヨタ財団から助成金を頂いた。主催者の一人として、各国・地域の参加団体メンバーとともに、深くお礼を申し上げます。)
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会議は、ペナンのジョージタウンにあるE&Oホテル(EASTERN&ORIENTAL HOTEL)や潮州会館(Penang Teochew Association)などを会場にして行った。シンポジウム2日目の会議には120名が参加して、交流懇親会にはペナン州首相(LIM GUAN ENG Chief Minister of Penang,Malaysia.)などの来賓も頂いた。
3日間の公式プログラムでは、連日、早朝から深夜まで、びっちりと各団体からの報告やディスカッションを行った(1分刻みで時間を大事にするほどの中身の濃いもので、各団体からの発表時など、持ち時間の3分前や時間切れの時に、「チン・チン・チン」とベルが鳴らされ、発表者・発言者は、「ああ、もう時間」と苦い顔をして、それを見た他の参加者が笑って、和むような場面も多々あった)。
最終日には、奈良まちづくりセンターから提案したまちづくりの宣言文(案)をたたき台にして「ペナン宣言」を議論した。また、各国・地域の団体間のネットワーキングを今後推進するに当たり、何を目的に、どのような協働事業を行い、どうやって行っていくかをテーマに、ワークショップ的に議論を行った。そして、これまでのネットワーク組織「アジア西太平洋都市保存ネットワーク」(The
Asia and West-Pacific Network for Urban Conservation (AWPNUC))を拡充して、新たなネットワーク組織「アジア・ヘリテージ・ネットワーク(Asia
Heritage Network (AHN)」を創設することを参加団体の間で締結した(ネットワークの組織名を決めるに当たっては、各国・地域の団体メンバーからいろいろな名称のアイデアが出され、最終的には多数決で決定した)。当初企画にはなかったことだが、ペナン・ヘリテージ・トラストとインドネシア・ナショナル・ヘリティジ・トラストとの交流の新たな協定書(覚え書き)に奈良まちづくりセンターが立会い署名することもあった。
主催した私たち奈良まちづくりセンターのメンバーとともに、アジア各国・地域からの参加者は、皆誰もが、限られた時間の中で互いに一生懸命に学び合い、新たな何かを求め合おうとした。互いに意気投合し、意識を共有できた時には感動し、笑い合い、また、日頃の悩みをぶつけ合って涙を流したりもした。会議前日を含めて毎晩に行った交流懇親会も楽しく盛り上がり、アジア各国・地域の団体間の信頼関係の構築に厚みを持たせることができた。今後の連携・交流推進の一手段として、インターネットを上手く使っていこうという話も団体間でまとまった(会議後しばらく経った今もメールやフェイスブックなどで意見交換を続けている)。
各国・地域でまちづくりを担っている各参加団体のメンバーは、日本に比べると比較的に年齢が若くて、日本のまちづくりの課題である「世代交代」の必要性を改めて痛感した。マレーシアの現地で国際会議のセッティングを担ってくれたペナンのスタッフは若者が多く、たくさんの地元大学生のボランティアが目を輝かせながら活き活きと裏方作業を担ってくれた。
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私たちのまちづくりのアジア交流は、20年ほど前(1991年頃)に、奈良まちづくりセンターのメンバーがマレーシア・ペナンの町並み保全活動を支援すべく、ペナン・ヘリテージ・トラストの立ち上げ支援、ノウハウ提供、資金提供、国際会議(第1回)の開催などを、トヨタ財団の助成金などを得て行ったことがネットワークの始まりであった。それが20年経って、9カ国・地域、20団体の参加で国際会議を開いて、新たなネットワーク「アジア・ヘリテージ・ネットワーク(AHN)」を拡充・創設できるに至った。最初のきっかけは、本当に小さな活動であったが、一歩一歩前へ踏み出し続けることで、少しずつ大きなものになっていった。ペナン(ジョージタウン)が2008年にユネスコの世界遺産に登録されたが、それは、ペナンの有志とその仲間たちが20年前に蒔いた種が成長して実ったものであった。20年前に第1回の国際会議を開いた際に、「ユネスコに登録できないかな」、と夢物語を語っていたのである。
(今瀬政司、2013年2月4日)
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■「まちづくり国際シンポジウム in マレーシア・ペナン」参加団体
(9ヶ国・地域、20団体)
◇Korea 大韓民国
・Bookchon Cultural Forum 北村文化フォーラム*
◇China 中華人民共和国
・Huaquiao University, Xiamen 華僑大学(龍元教授)*
◇Taiwan 台湾
・Taiwan Institute of Historical Resources Management 台湾歴史資源経理学会*
◇Cambodia カンボジア王国
・Khmer Architecture Tours クメール建築ツアーズ*
◇Myanmar ミャンマー連邦共和国
・Yangon Heritage Trust ヤンゴン・ヘリティジ・トラスト*
◇Thailand タイ王国
・Thai ICOMOS タイ・イコモス(国際記念物遺跡会議)*
・Chiang Mai Urban Development Institute Foundation チェンマイ都市開発研究財団*
・Creative Urban Solutions Center クリエイティブ・アーバン・ソルーション・センター
・Phuket Community Foundation プーケット・コミュニティ基金*
◇Indonesia インドネシア共和国
・Indonesian National Heritage Trust インドネシア・ナショナル・ヘリティジ・トラスト*
・Aceh Heritage Community Foundation アチェ・ヘリティジ・コミュニティ基金*
・Badan Warisan Sumatra バダン・ワリサン・スマトラ
・PAN-Sumatra Network パン・スマトラ・ネットワーク
・Jogja Heritage Society ジョグジャ・ヘリティジ・ソサイエティ
・Paguyuban Cak & Ning Surabaya パグユバン・カク&ニング・スラバヤ
◇Malaysia マレーシア
・Lestari Heritage Network レスタリ・ヘリティジ・ネットワーク*
・Penang Heritage Trust ペナン・ヘリティジ・トラスト(共催団体)
・George Town World Heritage Incorporated ジョージタウン世界遺産法人
・Perak Heritage Society ペラック・ヘリティジ・ソサイエティ
◇Japan 日本
・Nara Machizukuri Center (社)奈良まちづくりセンター(主催団体:8名)
計9ヶ国・地域、20団体
(*:奈良まちづくりセンターの招聘団体(11団体))
シンポジウム2日目の会議参加者:120名
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■ペナン国際シンポジウムの「レスタリネットワーク」と主催者(奈良、ペナン)のホームページ
http://lestari.asia/ http://lestari.asia/?p=215 http://lestari.asia/?p=143
http://www4.kcn.ne.jp/~nmc/ https://docs.google.com/file/d/0B77_Ml54CvnHRzZNUUtXR2NPYnc/edit
http://www.pht.org.my/
■紹介された新聞記事:朝日新聞2013/1/10付
※(社)奈良まちづくりセンターでは、後日、報告書を取りまとめる予定である。
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