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◆本日(5/23)、東京株式市場で日経平均株価が大きく急落し、前日比1,143円28銭(7.32%)安の1万4,483円98銭で引けました。国内外に大きなショックが走り、海外の市場にも影響が波及しています。急落のきっかけとなった要因の一つとして、HSBCホールディングスが23日発表した5月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI、季節調整済み)速報値が49.6となり、好不況の節目(50)を割り込んだことがあります(4月の確報値50.4から低下、7カ月ぶりの低水準)。
◆異次元の金融緩和策(金利低下誘導策)に反して、このところ急上昇していた金利も、5/23、急激に乱高下しました。東京債券市場では、アメリカで国債が売られ長期金利が上昇したことを受けて、日本国債を売る動きが一段と強まり、長期金利(償還までの期間が10年の国債の利回り)が、一時、約1年2か月ぶりに1%まで上昇しました。その後、日銀が金利の変動を抑えるため金融機関に1兆円余りの資金供給を行い、また株式市場での日経平均株価の急落を受けて国債を買い戻す動きが出たことから、金利は0.835%で取り引きを終えました。また、円安誘導策でこのところ急速に値下がりしていた円も、5/23、急激に上昇しました。外国為替市場では、株価の急落などの影響で(利益確保の円買い戻しなど)、 1ドル=103円半ばまで値下がりしていた円相場が、一転して一時100円台後半まで値上がりし、5/23 23:13現在、101円69-72銭となっています。
◆東京株式市場で日経平均株価はこのところ、実体経済とかけ離れ、国内外の社会・経済・政治の諸情勢の影響も殆ど受けることなく、ほぼ一本調子で急上昇をし続けてきました。かつてのバブル時のようなマネーゲーム的な状況が作られつつあることは否めず、本日(5/23)の暴落とも言える株価の急落は、このところの急上昇の反動として自然な成り行きとも言えます。大きな損失を出した投資家がいる一方で、空売りをするなどして大もうけをした投資家(特に海外投資家など)もいると思われます。
◆このところの急激な円安・株高傾向にも関わらず、国内の設備投資は弱く、貿易収支の巨額の赤字は続いています。内閣府が5/16に発表した2013年1~3月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)の速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0・9%増、年率換算で3・5%増となりましたが、設備投資は企業の投資意欲が回復せず0・7%減となっています(今後、消費税率引き上げの際の判断基準となる4~6月期も、2012年度補正予算に計上された公共事業が執行されてGDPが押し上げられる見込みですが、設備投資がどうなるか気になるところです)。また、昨日(5/22)、財務省が発表した4月の貿易統計(速報、通関ベース)では、貿易収支(輸出額-輸入額)が8,799億円もの巨額な赤字となり、赤字状況がいまだに続いています。
◆ 円安誘導策によって円安が進んだとしても、円高時に海外進出した企業の多くは、その海外設備投資を回収するのに相当の時間がかかることなどから、すぐに国内に戻ることは容易ではなく、また、円安による輸出の増加が期待できたとしても、一部の業種・企業などにその効果は限定されています。円安によるコスト増など負の影響をカバーするほどに、日本全体で輸出(特に数量)を大幅に増やすためには、やはり、現実の経済実態を直視して、国内経済の自立力と国際競争力それ自体を総合的かつ長期的な観点から強化していかなければならないと思われます。
◆債券市場の変動率が高く長期金利が上昇傾向にある中、日銀の黒田総裁は5/22の会見で、市場安定に向けて国債買い入れなどオペレーションを「弾力的に運営する」と表明し、日銀は本日(5/23)、その弾力的なオペ運営の一環として措置を講じたとしています。しかし、債券市場は、複雑な国際金融市場の流れの中で、具体的な効果の高い手立てはもうあまり残されていないと言え、今後、政府・日銀の思惑とは全く違うものとなっていく可能性もあると思われます。現在の長期金利は上昇しているとはいえ、1%程度のレベルですので負の影響はそれほど大きくはないですが、もしも今後、大幅に上昇するようになると、直接的な金融市場、不動産市場はもとより多方面に大きな影響を与えることになります。アメリカのサブプライム住宅ローン危機のような事態や国債暴落などのような、とんでもないことが起こる可能性については、誰にもまだ分かりません。しかし、少なくとも将来的な様々な可能性を考慮して、万が一、金融・財政危機が起こった時のことも想定したセーフティーネットを張っておくことだけは、政府サイドも民間サイドも必要であろうと思います。
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