地域デザイン研究会


DESIGN IN

−号外(抜粋)−

1994年12月10日

地元学に思う

水俣市 吉 本 哲 郎

地元学の背景
地元学1.地元学とは何か2.調べ・考え・創りあげ3.基本的な目標

3.地元学の基本的な目標

 水俣出身の作家石牟礼道子さんは「豊かさを手にいれた替わりに自然や自然と共に あった暮らしを失ってしまった。元に戻ろうにも元が分からなくなっている。記録を 掘り起こし記録していきたい」と語る。また「水俣には近代が露出している」とも。

 随分と考え込まされる指摘である。何も近代を否定するのではなく、近代の光と影 を直視しつつ、これから何をどうしていけばいいのかを考えている。

 水俣病の被害者である杉本さん夫妻は10年間の寝たきり生活を起き出して不知火の 海でシロゴ漁を始める中で、緒方正人さんも水俣病認定申請を取り下げシステム社会 の中に取り込まれない生き方の中で、近代の負を体に入れて今までと違う何かをすで に生み出しているように思える。見たり聞いたりするだけで教えられることが多い。 どう表現すればいいかが残っているだけだと思うので考えつづけていきたい。

 地元学には、産業革命以降、行き過ぎた近代文明をどう内発的に卒業していくのか が問われている。自然環境と共生する社会の在り方、暮らし方、持続可能な社会をど う築いていくのかが地域の共通の課題として横たわっていることを指摘しておきたい 。

 水俣はそんなことを考えてしまうフィールドだし、水俣そ のものが私の先生だということも。


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