また、ネットワークはできていても、ネットワーキングしているとは限らな い。ネットワーキングは、各団体それぞれにとってのメリットがなければ成り 立たないものである。今回の震災応援でも、この「各団体にとってのメリッ ト」という点が1つの壁となって、ネットワーキングがなかなか進まなかった と言える。近年、市民団体の協力・連携の必要性が叫ばれる中、その具体的な 方策が見つからず、なかなか進まないのも事実だ。
パソコンによる電子ネットワーク利用は、こうした課題の克服策の一つに成 り得るものと、私は考える。電子ネットを使うことで、団体メンバーの誰もが 平等に外部他団体メンバーとの連携を取ることができる。また、情報の共有化 が容易にできるようになることで、団体間の相互メリットの創出も進むであろ う。
最近になって、インターネット利用にかかるコストがどんどん低下してきて いる。市民団体にとっても、インターネットはコスト的に十分に利用できる範 囲となってきた。かつ、その操作技術もますます容易になってきている。私個 人ですら、自宅や外出先でその機能をフルに使えている(実は私も少し前まで は全くのインターネットの素人であった)。インターネットは、個人レベルで さえも利用可能な時代になってきたのである。
電子ネットワークができる環境にある団体や人が少ない、だからまだ有用性 に乏しい、との声も一部では聞かれる。しかし、市民セクターにとって、そん な悠長なことは言っておれない時代になってきている。企業セクターや行政セ クターでは、インターネットやパソコン通信のコスト低下等とともにその有用 性に気づき、最近急速にその導入・活用に動き始めている。特に、震災後の勢 いにはすさまじいものがある。もう数年後には、日本でもパソコン通信やイン ターネットは、極めて日常的な通信手段となっていることが予測される。
このように、社会情勢の変化から近い将来、市民団体にとっても、インター ネットやパソコン通信は必要不可欠な情報手段となるであろう。ただ、問題は その生かし方である。各市民団体が、電子ネットワークの技術を如何に強力な 道具として使いこなすか、その使い方とその際のネットワークのあり方が、今 後問われてくるものと思われる。
なお、よく市民活動の基本は現場主義、フェイス・トゥ・フェイスであるか ら、コンピュータ・ネットワークなんて、との声もある。確かにその通りだ。 だが、両者は全く別次元のものと考えるべきであろう。コンピュータ・ネットワークは、あくまで、電話やFAXと同じく道具であり、手段なのであるか ら。