SIC 市民活動情報センターのＮＰＯ商標問題連絡会事業

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ＮＰＯ・ボランティア等の商標問題に関する事業

「ＮＰＯ商標問題連絡会」事業（2003年6月～）

※お問合せは、事務・調整担当の(特活)市民活動情報センター（担当：今瀬）（０６－４３９５－１１４４）まで

商標取消決定書のポイント解説と私見（ＮＰＯ・ボランティア）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2005年5月17日）

皆様

(特活)市民活動情報センターの今瀬政司です。

本日、題名：「【緊急報告】特許庁が「ＮＰＯ」「ボランティア」の商標登録を取消」
のメールでご報告させて頂きました件では、
審議決定書の枚数が膨大なため、取り急ぎ、結論の箇所のみを引用し、
ご報告申し上げております。

決定書の詳細（全文）は、追ってご報告できるかと思いますが、取り急ぎ、
ＮＰＯ・ボランティアに携わる立場で、決定書の全文を見た場合に、重要であると
思われるポイントを小生今瀬個人の視点で申し上げます。（急ぎのメモ程度ですが）

なお、以下は、主として「ＮＰＯ」商標の方を述べていますが、
「ボランティア」商標も基本的に同じです。

【「ＮＰＯ」「ボランティア」の商標取消決定書の構成・ポイントと私見（今瀬）】

■結論
登録４６６５８２２号商標を取り消す。
（「ボランティア：は、登録４６６５８２３号）
■理由
第１　本件商標
第２　登録意義の申し立ての理由（要旨）
第３　商標登録の取り消し理由通知
　１．「ＮＰＯ」の語について
　２．本件商標の自他商品識別力
第４　商標権者の意見（要旨）
　１．本件商標の登録妥当性について
　２．本件商標の登録が維持されるべき理由
　３．まとめ
第５　当審の判断（以下記載）

＜当審の判断の理由文について＞
１．「雑誌、新聞」を指定商品とする商標の自他商品の識別力について
（１）「雑誌、新聞」を指定商品とする商標の一般的登録要件

（２）「雑誌、新聞」の題号に関する商標審査基準について
→商標審査基準で、「新聞・雑誌等の定期刊行物の題号は、原則として、
　　自他商品の識別力があるものとする」、となっているが、原則としてということは
　　例外があるということであり、特許庁は、あくまで実情に基づいて、総合的に
　　検討して、その適否を個別に判断するのが妥当と言っている。
　　つまり、実情的には、雑誌等でも自他商品の識別力がないものが存在すると
　　言っている。それを個別に見極める必要があると言っている。

→商標審査基準が定められていることは否定できないが、だからと言って、
　　商標権者（角川さんのこと）が言うような主張、理由をもって、商標登録が認めら
　　れるとしたら、自他商品の識別力の有無にかかわりなく、「早い者勝ち」的に
　　登録されることになってしまう、と特許庁は言っている。
　　商標問題が起こったときに、ＮＰＯ関係者の多くが心配し議論をした、
　　「何でもかんでも早い者勝ち」的なあり方はおかしいのではないか、という点を
　　特許庁も言っているのである。

２．本件商標の自他商品識別力について
（１）本件商標の構成と創作性の程度
→「ＮＰＯ」の語は、商標権者（角川さんのこと）が創作した語ではなく、国民各層に
　　おいて広く知られ、使用されている、と特許庁も判断している。

（２）「ＮＰＯ」の語が取引者・需要者により自他商品の識別標識として認識される
　　程度について
（３）「ＮＰＯ」の語が定期刊行物の題号の一部に使用されている実情
→上記１の視点で、検討した場合に、
　　我々が多くの賛同者、協力者の方々のご協力のもと、「ＮＰＯ」の語が
　　定期刊行物の題号の一部に使用されている事例・資料を集めて特許庁に
　　提出した結果、特許庁は、「ＮＰＯ」の題号の雑誌等は、これまでに既に、
　　世の中にいっぱい出ているじゃないか、と判断している。
　　つまり、その実情から判断して、「ＮＰＯ」単独では識別力がない、ではないか、
　　と判断したのである。
　　なお、ここでは、洋服の「ベアー」の判例を引用しています。
　　特許庁は、「ＮＰＯ」の語の普及度を認めたわけである。
　　我々ＮＰＯ・ボランティアが、「ＮＰＯ」という言葉、その概念、精神、あり方、
　　活動の大事さを社会の多くの人に認めてもらいたい、もっともっと多くの方に
　　一緒になって活動してもらいたいといった思いで、活動し、「ＮＰＯ」の語を使って
　　きましたが、その思いと成果が特許庁に伝わったと言ってもいいのかもしれません。
　　たくさんの機関紙などを送って頂いたＮＰＯの方々、あるいはその存在を教えて
　　頂いた方々に、本当にお礼を申し上げます。

（４）「ＮＰＯ」の語の独占適応性
→また、「ＮＰＯ」の語は、みんなが使ってきているし、「ＮＰＯ」という言葉は活動
　　をする上で必要な表示なんだとしてこれからも使っていきたい、と望んでいる実情
　　があるんだ、だから、特定の者によってその独占使用を認めるのは「公益」上適当
　　ではない、と判断するのが正しいと言っている。
　　この点は、この商標問題が起こったときに、多くの賛同者の方々から寄せられた声、
　　思い、その実情が特許庁に伝わったものと言っていいでしょう。
　　みんなが使いたいもの（言葉）はみんなの共有財産であって、みんなが使えるべき
　　ものなんだ、という主張が通ったのです。

（５）本件商標が使用される指定商品に係る取引の実情
→商標権者（角川さんのこと）が、「ＮＰＯ」商標登録の査定時において、「ＮＰＯ」の
　　語が入ったものをたくさん使用していたということの証明はしていない、と特許庁は
　　言っている。
　　つまり、ＮＰＯイコール角川さん、というイメージが社会の中でなされるほどの実情は
　　見られない（商標権者は主張、立証していない）、と言っている。
　　商標問題が起こったときに、ＮＰＯの多くの関係者が言っていたことですよね。

（６）本件商標の商標権の効力と識別性との関係について
→我々ＮＰＯ関係者等が、「ＮＰＯ」の語を使った機関紙、雑誌、書籍などを集めて、
　　証拠として特許庁に提出していたことに対して、
　　商標権者（角川さん）が、ＮＰＯ法人等が発行する機関紙や書籍には商標権の効力
　　は及ばない、と言っていたが、特許庁は、判例も用いながら、商標権の効力の範囲
　　の問題と、自他商品の識別力があるかないかの問題とは、別次元の問題だ、として
　　主張を退けている。

（７）甲第５号証の機関誌、広報誌等は商品性を有しないとの商標権者の主張について
→商標権者（角川さん）が、ＮＰＯなどがこれまでに出してきている機関誌、広報誌、
　　雑誌等の刊行物は、定価が付いているものであっても、商標法上の「商品」には
　　該当しないと主張していたことに対して、
　　特許庁は、商標法には「商品」の定義規定は存在しないから、ＮＰＯなどの発行する
　　機関誌等の定期刊行物が商標法上の商品でないと一概に解釈するのはおかしい、
　　法的根拠はないと、言っている。
　　つまり、ＮＰＯなどの機関誌が商標法上の商品であるかどうかは、実際に、取引流通
　　過程におかれるか否かによって、個別具体的に判断すべきだ、と言っている。

　　また、インターネット等の通信販売などについても、判例をもとにして、現在のインター
　　ネット利用の実情をふまえて言及している。

　　さらに、特許庁はこれでもかと言った感じで突っ込んで、我々ＮＰＯ関係者が集めて
　　示した既存の機関誌等の証拠の中に、仮に、商標法上の商品でないものが含まれ
　　ていたとしても、ＮＰＯなどの刊行物の題号の一部に「ＮＰＯ」の語が使用されている
　　ことは明らかな事実であり、取引者・需要者の自他識別力の認識の程度を低めこそ
　　すれ、高めることはない、と言っている。
　　つまり、商標権者（角川さん）が言うように、証拠の定期刊行物の中に商標法上の
　　商品でないものが仮に存在したとしても、現実の実情を見れば、今回の商標取消の
　　理由を否定することにはならない、とまで特許庁は言っている。

３．結論
先に送付したメール（題名：「【緊急報告】特許庁が「ＮＰＯ」「ボランティア」の商標登録を
取消」）でご報告、記載させて頂いたとおりです。

このように、今回の商標取消決定では、我々ＮＰＯ関係者が、阪神淡路大震災前から、
あるいは震災を大きなきっかけとして、「ＮＰＯ」、「ボランティア」という言葉を思いを込め
て愛着を持って使い、ＮＰＯ、ボランティアの概念、精神、あり方、および活動の大事さを
社会に訴えかけてきたことが、特許庁に伝わったと言えるのかもしれない。
「ＮＰＯ」、「ボランティア」という言葉が、「市民みんなのもの」、「共有の財産」、「公共、
公益的なもの」だ、と主張するＮＰＯ関係者の声を特許庁が取り入れて、判断したので
ある。

今回は、多くのご賛同者、協力者の方々からの証拠書類の提供がもしなかったとしたら、
ひょっとしたら決定の判断は違っていたかもしれません。証拠書類、言い換えれば、
ＮＰＯ・ボランティア関係者のみんなの普段の活動が実を結んだと言えるのかもしれません。

阪神淡路大震災などを契機としてＮＰＯ、ボランティアの広がりが進んだわけですが、
もし、今回の商標問題が５年前あるいは10年前に起こっていたら、特許庁の判断は違った
ものになっていたかもしれません。

多くのご賛同、証拠資料ご提供、カンパご提供につきまして、本当にありがとうございました。

また、今回の異議申立に際しては、弁護士の三木秀夫さんや弁理士の山本俊則さんら
専門家の代理人の方々が手弁当で専門的対応をして頂きました。
まさしく「ボランティア」としての代理人のお力があってこその商標取消決定だったと思います。
この場を借りて、あらためて深くお礼を申し上げたいと思います。

取り急ぎ、小生、今瀬が意義申立人の一人として個人的、メモ的に記したものを
お送りいたします。

商標取消の決定書について（私見の追記）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2005年5月19日）
皆様

(特活)市民活動情報センターの今瀬政司です。

角川さんの「ＮＰＯ」「ボランティア」商標を特許庁が取消した件につきまして、
今回の特許庁の決定書の中身（文章）は、すばらしいものだと思います。

緻密に細かく論理的展開がなされていると思います。
特許庁のご担当者さんの方の思い入れ、意気込みがものすごく伝わってきます。
本当に画期的な決定書だと思います。

今後、ＮＰＯ・ボランティア関係のみならず、様々な社会・経済活動における
他の商標問題の案件の判断のされ方などにも影響を与えるものだと思います。

角川さんがこの後、どのような対応をされるか分かりませんが、
我々ＮＰＯ・ボランティアの当事者としては、今回の決定書の意味を大事にし、
いろいろな形で活動に生かしていく必要があると思います。

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