SICのＮＰＯ商標問題に関する事業

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ＮＰＯ・ボランティア等の商標問題に関する事業

ＮＰＯ・ボランティア等の商標問題に関する意見
今瀬政司メモ（2003年6月10日）

角川さんの件をきっかけとしたＮＰＯ・ボランティア等の商標登録の問題に関して、(特活)市民活動情報センターとしては、異議申し立てに賛同しております。
以下は、当問題に関して、小生個人の感じるところを述べさせていただきます。

基本的には、角川さん、特許庁さんの対応には、意義申し立てをすべきであり、かつ、現在の制度やシステムにも問題があると思っております。

■この問題に関して、「冷静に」、との議論については、微妙な違いがあるような気がします。
　◇角川さんと特許庁さんの対応は間違っている。
　　ただし、きちんと物事を見極めて判断し議論し運動をしていく。
　◇時間をかけて専門性も理解したうえで議論すべきで、
　　現時点で早急に良し悪しの判断をすべきでない。
　◇角川さんと特許庁さんの行動、現在の制度・システムは間違っていない。
私も、「冷静さ」はもちろん必要と思っております。ただ、気になるのは、「冷静に」という議論が、この問題を「問題視」することを「否定」するような議論につながらないか、ということです。「意義申し立て意見」を「感情的」との方程式に歪曲するようなこともあってはいけないでしょう。

■私も、もちろん、「素朴な感覚」としての「これはおかしい」との議論と、専門性を踏まえた「制度的」議論との両方が大事であると思っております。

■「ＮＰＯ」という言葉を、私自身、特に意識して使い始めた頃のことをなつかしく思い出します。（社）奈良まちづくりセンターが、1992年頃に、ＮＩＲＡ（総合研究開発機構）さんに事業の企画提案をして受託実施した、「市民公益活動基盤整備調査研究」の研究会で、「ＮＰＯ」という言葉とその概念を、市民活動、ボランティア活動に取り入れてやっていこう、社会の多くの人たちに、我々がやっている市民活動の重要性を理解してもらい、協力者を増やし、活動基盤を強固にし、法制度や社会経済システムを変えていこう、そして、それによって、社会問題の解決を促進させ、困っている人を応援していこう、として、「ＮＰＯ」という言葉を掲げて運動を展開してきました。
阪神・淡路大震災の時には、「ＮＰＯ」という言葉に「思い・想い」を託し、「ＮＰＯ応援団」という言葉をつくり、応援活動していたことも思い出します。
「ＮＰＯ」という言葉は、社会の多くの人たちの理解を得るための、市民活動をやる我々の合言葉でした。「ＮＰＯ」には、一人一人の「思い・想い」、「情熱」、「夢」が詰まった言葉でした。
「ボランティア」という言葉も同じですよね。
「ＮＰＯ」や「ボランティア」という言葉が、これほどまでに大衆化し、「金になる」時代になりました。良いことなのか、悪いことなのか。
言葉は、単に「言葉」ではなく、その誕生と使われてきた経緯においては、一人一人の想い・思いと、みんなで共有する想い・思いが詰まっています。

■私は、これほどまでに多くの人が共有している「ＮＰＯ」や「ボランティア」といった言葉が、特定の者だけの権利として、握られることは間違っていると思っています。他者に対して権利を行使するか、しないかは関係ないでしょう。
権利として握ってしまうこと自体が間違っていると思います。

■私は、この商標権問題を制度的議論（現制度として）で見ても、ルール上、不適切であると解釈します。
特許庁さんの担当者が、たまたま制度の解釈や言葉の使用実態を見誤って、「ＮＰＯ」という言葉の商標権を与えてしまったとしたならば、それは、そうしたことを許してしまう仕組み・システム自体も誤っていると思います。
また、もしもし仮に、制度の解釈が前例や他事例との比較において、間違っていなかったとしたら、現在の法制度・システム自体が間違っているのであり、「制度改革」を行っていく必要があるでしょう。

■ＮＰＯ等といった言葉が、角川さんのみならず、既に様々に商標権登録されている、というのは既成事実としてはあります。
ただし、もちろん、それらの多くは、電子機器部品や化学部門等の範囲であり、おそらく記号として取ったものと解され、「非営利組織」などといった意味を前提に、しかも新聞・雑誌などといった、ＮＰＯにとっては重要な言論表現分野での取得とは、意味合いが異なる部分がありますが。

■商標権において、従来、企業・経済の世界ではこうだから、それにＮＰＯの世界も素直に従わなければいけない、仕方がない、というのは、現実の問題として確かに一理ありますが、不条理なこと、弊害を起こすようなことであるならば、それは間違っている部分があるのであり、それをみんなで、変えていくことが大事ではないでしょうか。

■「ＮＰＯと企業・行政の協働」の必要性が叫ばれる中、従来の企業・経済システムや行政システムの「土俵」の上に、ＮＰＯ・市民活動が乗っかっていくことも必要ですが、逆に、ＮＰＯ・市民活動のシステムの「土俵」の上に、企業・経済活動や行政活動が乗っかっていくことも必要でしょう。

■私は、現在の商標権の制度・仕組みが抱えている問題を「問題視」し、議論し、場合によっては変革を起こしていくことは、ＮＰＯのみならず、企業にとっても、経済産業全体にとっても、有益なことであると思います。
企業・経済活動の世界でも、商標権などの制度に基づく「権利」ということでは、現在の制度やシステムが効用をもたらしている一方で、弊害をもたらしている部分がある、ということも事実であると思います。

■今回の商標権などの問題とはケース、内容、次元が全く異なりますが、例えば、中小企業の権利を大企業が横取りしたりして（制度に則っていたとしても）、理不尽な形で弊害を起こすことがありますよね。
権利取得・売買がビジネスとして行われ、囲い込みをされてしまうことで、新たに沸き起こる経済活動の芽をつぶしてしまっていることもありますよね。
自然環境を生かしたシマおこしとして、地域経済の活性化、観光振興を図ろうとしたら、海岸線いったいを大手・東京資本などに買い占められていて（もともと直接すぐに使う目的もないのに）、にっちもさっちもいかないことがありますよね。
ある地域の多くの人たちの「心のふるさと」であるような自然環境や古い建築物などが、地域外の大手資本などに権利を取得され、自分たちの意思では自由に使えなくなり、場合によっては、変えられてしまったり、壊されてしまったりすることがありますよね。
今回の問題とは全く違う問題ですが、根源的な部分では、ある意味で共通するものを感じます。

■また、この問題を考えていると、全くの「頓珍漢な発想」で恐縮ですが、「ＮＰＯ」という商標権の権利を握った角川さんが、まるで、ある種の権利・権限を持った”行政”という存在と
ダブって見えてきます。なぜだか。。。
角川さんという企業体を、もし仮のこととして、「行政」に置き換えたら、行政が、ＮＰＯという言葉を使うことを、市民・ＮＰＯに許してあげますよ、でも、何かの事態で行政の事情が変わったら、許可しませんよ、という感じに見えてくるところがあります。
ある種、主体者としての権利は、多くの活動当事者にはない、っという感じで。
素朴な感覚として、なんか変な感じです。全く頓珍漢な発想でしょうけど。

■この商標権問題に関しては、ＮＰＯ、市民活動団体の社会への提言能力、社会変革能力を、ある意味で問われている部分があるようにも思います。

長々と、私自身、感じるところを、述べさせていただきました。

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