小豆島の西方、瀬戸内海国立公園内の自然に恵まれた豊島で1970年代後半から
、悪質な産業廃棄物中間処理業者が金属回収業と称して、シュレッダーダストや製紙
かすを野焼きし、不法埋め立てをする違法操業を10年以上にわたって続けた。
1990年11月、廃棄物処理法違反で兵庫県警が事業者を摘発、実質的経営者は
逮捕され、1991年7月有罪判決が確定したが、跡には50万トンを越える産業廃
棄物が放置されたままとなった。
香川県は、事業者に対して「産業廃棄物の撤去」などの措置を命令し、香川県の指
導のもと、わずか1千トンあまりの産業廃棄物が撤去された。
この実績をもって香川県は、有害と思われる産業廃棄物の撤去はおおむね終えた状
況にあるとし、また一方で事業者には産業廃棄物を撤去する意志も能力もなく、事件
解決のめどは立たなくなってしまった。
1993年11月、事態を打開するため豊島住民は残された産業廃棄物の撤去など
を求めて、公害紛争処理法に基づく公害調停の申請を行い、現在調停作業中である。
調停の一環として1994年12月より2億3千600万円の巨費を投じて、総理
大臣の任命した専門委員による、事業場及び周辺環境の実態調査が実施された。
調査の結果、産業廃棄物の中に極めて高濃度のダイオキシンやPCB・鉛・ヒ素な どをはじめとする多種多様な重金属・有機塩素系化合物が大量に存在していることが 明らかとなった。
実に40万トン以上の産業廃棄物が埋め立て処分に係る有害廃棄物の判定基準を超 過し、その汚染は直下土壌・地下水にまで及んでおり、さらには海岸の生物からもダ イオキシンが検出されるなど憂慮される事態である。
専門委員によって「生活環境保全上の支障を生ずるおそれ」が指摘され「早急な対策 の必要性」は明示されたものの、現代日本にこの事件解決に必要な指針は見あたらない。
最近全国各地で発生されている廃棄物問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・
廃棄物にまつわる責任は、だれが負うのか、リスクは、コストは・・・・・・・・
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豊島事件は、専門委員によって「生活環境保全上の支障を生ずるおそれ」と「早急
な対策の必要性」が指摘されました。
しかし、それは事実が客観的に認められたということであって、直ちに原状回復に
結び付く訳ではありません。
事件の解決は、単に豊島に残された産業廃棄物をどういう技術で処理するかといっ
た問題に止まらず、廃棄物の持つ問題性・廃棄物に対する考え方を根本から問い直さ
れなければ見えてきません。
今ここに、日本最大の産業廃棄物不法投棄事件である豊島事件を検証することを通
して国民的課題としての廃棄物問題を見つめ直し、豊島が直面している現実の意味と
役割を問いたいと思います。
皆様の積極的なご参加をお待ち申し上げております。
大川真郎(豊島弁護団)
岩城 裕(豊島弁護団)
中坊公平(豊島弁護団)