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12/1 豊島シンポジウム 要約
文責 田中 健太郎
大村 藍子
坂野 雄一
(立命館大学政策科学部自主ゼミ豊島プロジェクト所属)
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〜それまでの経緯〜
● 裁判の経緯
12回の公害調停について
第一期 (1〜4回の公害調停)
県に撤去を要請→県は責任がないと主張
現地調査→結果の公表→意義申し立て→確認
第二期 (5〜7回の公害調停)
県は現場を「安全である」と主張→住民団体はこれを崩す
第三期 (8〜12回の公害調停)
県はあいかわらず責任を認めず、そして最後の12回目(10/13)の公害調停で第七案を提出。これに対し住民は当然反対、公害等調整委員会も県が松浦に対してなんら指導をしなかったことを県に指摘した。このことから県の「県に責任がない」という主張は崩れた。
第四期 今後
これからはじまる第四期では国を調停の場に引き出さなければならないだろう。
裁判の進め方として松浦に住民一人当たり五万円の慰謝料の支払いを要求する
↓
この過程で不法投棄が行われた土地を住民のものにする
(このシンポジウムの後の12/26に住民勝訴の判決が出た)
↓
廃棄物撤去を求める
● 政治について
国の案として、国が産業廃棄物の研究機関を持ってきて、産廃の研究をしながら処理をするという案もあるが、ただこういう妥協案の問題点として
1、ゴミが島内に残る(島外撤去されないで処理だけがなされる)
2、新たにゴミを持ってくる恐れ、つまり島がゴミ処理場となる可能性
があるのでこの案を受け入れるという政治的解決はだめだ!!
調停の場で解決する必要がある。
〜各コメンテーターの主張〜
小畑 嘉雄 厚生省生活環境審議会産廃専門委員
立場
三十年のキャリアで、最初の十五年間は街の中からいかにごみをなくすかを考えていた。しかしフェニックス計画*、産業廃棄物処理法について考えているときに豊島の問題を知った。
最近の動き
廃棄物をめぐる動き
○来年四月〜包装容器のリサイクルがすすむ(市町村がすすめる)
○産業廃棄物、最終処分場、不法投棄についてのシステムの問題の解決の突破口として豊島問題が重視されている。
○10/2にダイオキシン削減に対する報告がまとまり、ダイオキシンの基準を厳しくすることが決まる。
発生源が焼却工場だと分かっているので、全国で1854個の焼却工場のうち、最新型600個の焼却工場以外は廃止しようという動きがある。
中間処理〜島外への持ち出しについて
問題は中間処理ができるのか?島外のどこへ持っていくのか?が問題となる。
中間処理に関しては技術的には可能である。ただ行政や処理業者にまかせきりにするとまた同じ様なことが起こりうるので住民の監視が重要!
どこへ持っていくか?の問題については豊島と同じような過疎地に持っていってはまた同じ事が繰り返されるだけになる。そして阪神から出た廃棄物なので阪神で処分するのが妥当である。またこの場合阪神にはフェニックス計画の最終処分場は処分場の利用費用が高いのであまり使われていないので余力がある。
*フェニックス計画 広域埋め立て処分場計画、7年前よりすすめられている
今後について
役人の考え方は二つの考え方があるとその二つの考えを両極端として真ん中をとって双方の考えの妥協点とする、しかしこれでは住民の考えは反映されないので、住民はこれ以上妥協できないということを示さなければならない。
筑紫 哲也 ジャーナリスト
豊島は国のシステムの集積した物。自分たちに都合の悪い物は過疎地へ押しつける。沖縄へ基地を押しつけ、原発も同様。私は大分の過疎の山奥出身だからよく分かる。経済のために自然が破壊されていいのか?「人間を幸福にしない『日本』というシステム」がある。民主主義は多数の人の都合で事が進む。沖縄・巻町・豊島の活動は「地域エゴ」と言われるが、こんな例を考えるとどうだろう。
「強盗が入りました。100万とっていこうとしました。しかし、犯人と被害者の
『双方の歩み寄り』
により、50万をとらせてあげることにしました。」
なぜこのように住民が譲らなければならないだろうか?
〜会場からの「子供を幸せにしない教育」に関する問いに〜
過去の日本人が行った戦争が我々にいまだに影響しているように、次世代になぜ豊島、日本をこんな状況にしたのかと言われないように最低限のことをしたい。私たちは生まれたばかりの子供に対し一人当たり366万円もの負担(国債などの借金の形で)をかけているのだから。
中坊 公平 弁護士
私が関わって4年になるが事態は平行線だ。今は一番危険な状態であるし。9/26にも香川県知事が「県に責任はない」という答弁をした。県は非常識である。なぜ住民が譲歩しなければならないのか。捨て身になり落とせるところまで自分たちを落とし、ひくことができない線は守り通そう。
住民が20年もの長い間、なぜ戦ってこれたのかという疑問すら起こるときがある。1500人しか住んでない島に3つも福祉施設があることなどから分かるように「優しさ」の中に強さがあるのだろう。
帆足 養右 朝日新聞 編集委員
迷惑を被るのは人数の問題ではない。
ごみを「弱い所」へ持ってくることは社会システムとして正常でない。
「豊島」が全国版ニュースとなったのは首相の発言からであり、それまでは地方ニュースだった。
ごみ問題をテーマとした議員の集団はない。
兵庫県で起こったカネミ油症事件では処理しなければならないPCBが5500トンあった。高砂市では処理したくなかったが、他の地域に押し付けると、結果的に自分達も加害者になってしまうという問題があり高砂市で処理しようという決定をするまでに19年かかった。この事件ではPCBを製造した「カネガフチ」(企業)の施設で処理した。豊島もごみを排出した業者が処理すべきだ。中間処理後はあとにひくな。
植田 和弘 京大教授
現在の日本の問題は
1、生産優先で廃棄物を軽視してきたことが基本的問題点である。
→被害が過疎地へ集中している。
2、排出事業者、処理業者の無責任な態度、法の不備のため効力ない。
3、行政が無策であった。
→この3つが日本の社会システムの問題であるという共通認識が生まれたからこそ、豊島問題が行政課題になった。このシステムの欠陥を浮き彫りにしたのが豊島の運動である。だから解決策は決定的に重要な意味を持つ。
地域の生活環境は地域の人々が決める権利がある。
生産と廃棄物処理が行われ、はじめて「生産」と言える。
社会にとり必要不可欠な処分場は、以下のような一定のルールで決められるべきである。
1、手続きが公正である
2、環境への影響がない
3、排出した所はリサイクル、ごみを減量する努力を徹底する
「豊島」はこれらを満たしていない。最も正しい解決策は即時、完全撤去することである。しかし、50万トンもの有害な廃棄物が島に存在するという現状から出発しなければならない。
まず、有害な廃棄物は遮断型処分場で処分することになっているが、技術的に困難である。実行可能な案は中間処理で無害化しつつ、減量すること。
10年間島内処理にかかり、豊島の人々が重大な犠牲を払うことに耐えても、結果として廃棄物の完全撤去が得られるのなら、第1案だろう。
豊島問題が具体的な現実の行政課題になり、具体的な解決策を出すまでになり、この解決策の内容は非常に重要だ。
豊島問題の解決は他の産廃問題全てに影響する。
解決策が持つ重要な意義
解決策が豊島の問題をひきおこす構造的メカニズムを解決する方向を指し示すことができるかどうか
1、廃棄物処理を考慮しない生産はできないようになることの明確化
2、法の責任ルールの明確化、行政がやるべきことをやれるようになる行政改革
3、お金にかえられないけれど非常に重要な物が環境である。環境に価値があるということが共通認識になる。
世界的に見ても美しい環境である国立公園のなかで、何故こんなことがおこるのか
4、手続きの正義をはっきりとする。どういうルールに基づいて決めていくのかについて社会として習熟するか
5、解決策がはかられていくことは住民の自治の能力を示すことである。
人々がどうすべきか考え運動し、具体的解決策を勝ち取り、継続的努力がなされることは最大の意義である。
以上。